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メモ帳

ただのメモです

サリンジャー 遺作と新訳

2月末、サリンジャーの短編集「Franny and Zooey」の新訳「フラニーとズーイ」が新潮社から出た。いきなり文庫にて訳し下ろし、しかも村上春樹訳で、本来付属してはいけないはずの訳者解説が小冊子で付いてくる。まあ亡くなったからいちゃもん付ける人はいない。村上春樹の生原稿流出事件をめぐって(その1) ( その他文学 ) - BUNGAKU@モダン日本 - Yahoo!ブログ

もはや、サリンジャーで売ってるというより村上春樹で売ってるといった感じ。その上「いきなり文庫本」で出すという方法に、野崎訳の文庫本に親しんだ人たちも射程圏にいれたいのかな?ってあざとさがある。そんなことするならさっさと電子書籍導入しろよ新潮社。
この新訳にはまあ賛否両論あって、読み返すのにちょうどいいとか、読みやすくなったとか、野崎訳だけで十分とか、これは村上春樹の表現行為だとか、色んな意見を見かけた。
あと遺作が2015年から2020年の間に発表される「ライ麦畑でつかまえて」ホールデンが再び登場!! サリンジャー新作5作品が "遺言により" 出版へ:DDN JAPAN - Linkis.comというニュースもあり、しかもその中にはグラース・サーガの五つの短編(短編集?)もあるとのこと。だからこの新訳は、遺作を日本で訳して出す時に、村上春樹が訳しますよ〜みなさん買って下さいね!という布石なのかもしれない。という意見も。
最初に書いたようにサリンジャーで売ろうとすると、今の時代もうあんまり売れないのかもしれない。それに未だにライ麦〜は世界的にもずっと売れ続けてるらしいけれど、グラース・サーガの方はやっぱりその影に隠れがちだ。だから村上春樹のネームバリューをちゃっかり宣伝に使わせていただいて、いざ遺作の翻訳出します!って時にきちんと採算取れる下地を作っておこう…という新潮社の中のサリンジャー好きな方ががんばった結果なのではないかというのは考え過ぎかな。
例によって柴田元幸氏が翻訳の校正を手伝ったとのことだが、柴田訳のナイン・ストーリーズ(これはハードカバーで、お値段もちょっと高め)と比べてどれくらい売れたのかをきいてみたいところ。わたしは柴田元幸さんの訳が好きなんだけどな。
あと、以前エッセイ等で「ゾーイーは関西弁で訳したい」と書いていた村上氏。この新訳ではまさかそんな遊び心を出すことはできなかったが、代わりに?川上未映子さんがブログに関西弁でやたらフランクに説教するゾーイーを書いていた。あと死去の際にも記事を書いていた。http://www.mieko.jp/blog/2010/01/post-4885.html
実はこれを見てサリンジャーに興味を持ったので、この関西弁ゾーイーはわたしにとってとっても思い出深い?ものである。わたしにとっては亡くなってから、初めましてサリンジャーだったのだ。今ではこんなくどくて面倒臭くてハンサムで妹思いのお兄ちゃんがいたらいいな…とさえ思う位だ。でもこのゾーイー、ほんとにうざったいな。笑


翻訳夜話2 サリンジャー戦記 (文春新書)

翻訳夜話2 サリンジャー戦記 (文春新書)


村上訳ライ麦が出たときの柴田元幸氏との対談、(存命中のため)巻末に付けられなかった訳者解説等が載っている。やっぱり読み終わったあと解説があると安心する人間にとっては、村上訳ライ麦を読んだ後読んでととても面白かった。(それが作者本人の意思に反することであっても!)

翻訳夜話 (文春新書)

翻訳夜話 (文春新書)

こちらは第一弾。柴田氏・村上氏の翻訳対決?が見どころ。あとこれを読むとやっぱり村上春樹はあくまで小説家として自分の表現のために翻訳をやってるんだなってことが分かる。だからこそ、何とかして訳者解説を付けたかったんだろうな、という気がする。
もちろん野崎訳でも、解説付けられなかったからネット上に掲載するという方法をとっていたわけだが。そして今回も文庫に挟まれた小冊子の完全版(紙面の都合で全文掲載されなかった)がネット上に載せられている。がんばって宣伝して下さい。〈村上春樹 特別エッセイ〉こんなに面白い話だったんだ!(全編)|村上春樹『フラニーとズーイ』|新潮社